コーポレートブランディングは、企業としてのブランド価値を向上させ、競合他社との差別化を図る重要な経営戦略として注目されています。しかし、その必要性は認識していても、自社のブランディングをどう進めればよいか分からない、という企業も少なくないようです。そこで今回は、コーポレートブランディングの基本的な知識と具体的な施策や進め方、成功のポイントなどを解説します。
初めにコーポレートブランディングとは何か、その概要を解説します。
コーポレートブランディングとは、企業そのもののブランド価値を確立し、向上させる取り組みのことを言います。
ブランディングは、消費者や取引先、従業員も含めた社会全体に、商品やサービス、企業自体を「その企業ならではのもの」として認識させ、他社と差別化するための取り組みです。ブランディングのなかでも、商品やサービスを対象とするものはプロダクトブランディング(商品ブランディング)と呼び、コーポレートブランディングとは分けて考えます。
コーポレートブランディングでは、他社とは異なる自社の「企業としての存在価値」を明確にし、発信していくことが重要です。
ブランディングについての詳しい解説は下記でご覧いただけます。
・ ブランディングとは?意味や目的、成功のポイントを解説
では、企業の存在価値とはどのようなものでしょうか? 企業としての存在価値は「企業理念」と言い換えることもできますが、企業理念の内容は多くの場合、次の3項目(MVV)を意識して作られます。
次に、コーポレートブランディングを行う目的にはどのようなものがあるのかを解説します。
コーポレートブランディングに成功すると、消費者や取引先の認知度が上がります。企業姿勢への理解が進めば、商品やサービスに対しても安心感や信頼感を持ってもらえるようになります。
その結果、競合商品よりも自社商品が選ばれやすくなり、価格競争からの脱却が可能となるでしょう。企業自体のファンが増加すれば、LTV(顧客生涯価値:顧客が企業との取引を開始~終了までの間にどれだけの利益をもたらしてくれるのかを表す指標)の向上も期待できます。
LTVについての詳しい解説は下記でご覧いただけます。
・ LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法とその価値を高める施策をわかりやすく解説コーポレートブランディングを通して、株主や銀行、投資家などから企業としての信頼性や将来性を認められると、資金調達がしやすくなり、新たな事業展開を行う際も有利に働きます。
企業としての認知度が上がり、企業イメージが向上すれば、採用活動の面でも好影響が期待できます。
優秀な人材を採用できる機会が広がると同時に、ミッションやビジョンに共感する人材と出会えるため、入社後のミスマッチによる退社も抑制することが可能です。
コーポレートブランディングを行う目的には、インナーブランディング(社内に向けたブランディング)も含まれます。ミッションやビジョンを従業員全員が共有、理解することにより、自社への愛着や誇りが強まり、働く意欲の向上や離職率の低下につながると考えられるのです。
前章でお話ししたMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)は、何か問題が起きたときの判断のよりどころにもなります。自社が目指すべき姿についての共通認識は、担当者や部門ごとのブレを抑制して仕事の質を向上させ、競争力を高めて、企業体質を改善します。
コーポレートブランディングでは、ステートメントやブランドメッセージを具現化するものとして社名、ロゴ、タグライン(企業の理念やコンセプトを端的に表すコピー)、コーポレートデザインなどを決めていきます。
そのうえで、さまざまな形で情報を発信し、認知と浸透を図ります。
アウターブランディングとは、消費者や顧客、取引先をはじめとする社外のステークホルダーに向けたブランディングです。ここでは一般的なブランディングの施策例と、求職者向けに特化した採用ブランディングの施策例を紹介します。
前章で紹介したインナーブランディングの主な施策例を挙げます。
コーポレートブランディングを進める際の概略を、順を追って解説します。
次に、コーポレートブランディングを成功させるためのポイントを整理します。
ブランドの核となるミッション、ビジョン、バリューは、事業計画の方向性を示すものであり、経営判断のよりどころにもなります。それだけに、自社への理解に基づいて十分に議論を重ね、明確に定義することが重要です。
インナーブランディングがしっかりできていなければ、外部への情報発信やステークホルダーへの対応にブレが生じ、アウターブランディングもうまくいかなくなる恐れがあります。従業員全員、全部門が自社のステートメントを共有し、実践できるようになることを目指しましょう。
ブランド価値が浸透していくには時間がかかり、一度決めたら簡単に変更することはできません。コーポレートブランディングを成功させるには、短期での成果を求めず、じっくり時間をかけて育てていく覚悟を持つ必要があります。
最後に事例を2件紹介します。
日本最大級のフリマサービスを提供する株式会社メルカリは、コーポレートブランディングの目的を「自社にフィットする人材の確保」としています。
この採用ブランディングの柱となっているのが、社内のメンバー全員が発信できるコンテンツプラットフォーム「mercan」(https://mercan.mercari.com/)。さまざまなスタッフや社内の出来事を紹介し、「メルカリの今」を生き生きと伝えるWebサイトです。
採用の推進だけでなく、従業員のモチベーションアップや、新たなことに大胆に挑戦する企業風土の醸成にも貢献しています。
航空機や自動車の製造に不可欠な、超硬素材を使った工具を製造・販売する三菱マテリアル株式会社加工事業カンパニーの企業ステートメントは、「あなたの、世界の、総合工具工房」。単なる工具メーカーではなく、世界にひとつしかない、顧客のための「工具工房」を目指すというメッセージです。
同社では、ブランディングのツールとして、ステートメントから名前が付けられた情報誌「YOUR GLOBAL CRAFTSMAN STUDIO」(http://carbide.mmc.co.jp/magazine)を発行。インタビューや最新の加工技術などを掲載し、自社への理解や親近感を促すための工夫を随所に施しています。
コーポレートブランディングは、企業が「自社ならでは」の価値を社会に示す取り組みです。単にブランドのロゴやマークを一新して、認知を広げるだけでは意味がありません。企業としてのミッション、ビジョン、バリューを明らかにし、内外から共感を得ることによって、ブランド価値を高めることを目指しましょう。コーポレートブランディングに成功すれば、企業体質の改善や市場競争力の向上が期待でき、結果として将来にわたって企業経営を安定化することが可能です。
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