さまざまなブランディングの手法のなかでも、近年、大きなウエイトを占めるようになったのが、WEBブランディングです。WEBブランディングでは、インターネットを通じてブランドの魅力を伝え、ユーザーとの関係強化を目指します。この記事では、WEBブランディングの考え方や、目的、効果、手順、事例などを解説します。
WEBブランディングとは、インターネットを使って、企業や商品、サービスなどのブランドを訴求するための手法です。いつでもどこからでも情報にアクセスでき、細分化したニーズに対応して多様なコンテンツを提供できるという特徴があります。
WEBブランディングでは、WEBサイトやSNSをユーザーとのコミュニケーションの場ととらえ、情報発信や体験の提供により、自社や商品、サービスならではの価値を伝えます。主にオウンドメディアで展開されますが、WEB広告やキャンペーンサイトと連携するケースもあります。
次に、WEBブランディングの目的を紹介します。
ブランドの認知とは、単に名前や存在が広く知られることではなく、ターゲット層にその企業や商品、サービスならではの「独自の価値」を知ってもらうことを指します。
WEBサイトを訪れる人の多くは、検索サイトやWEB広告を経由してアクセスしてきます。彼らは自社や商品、サービスに何らかの関心やニーズを持つ、ある程度絞られたターゲット層と考えられます。
WEBブランディングでは、そうした層のニーズを分析し、要望に的確に応える自社ならではの情報や体験を提供します。そして、「WEBサイトを訪れて良かった」と感じるユーザーの体験を積み重ねることにより、ブランドとしての認知を高めていきます。
ブランドは、多くの人に信頼や共感を持ってもらうことで成立します。そのためWEBブランディングでは、単なる企業や商品の紹介だけでなく、信頼性や共感性を高めるためのコンテンツが必要です。
代表的なコンテンツとしては、「どんな価値を顧客に提供するか」という企業の約束であるブランドプロミス、ビジョンやミッション、商品やサービスが誕生した背景やそこに込めた思いといったブランドストーリーが挙げられます。
ターゲットによっては、ゲーム要素のあるコンテンツ、コミュニティなど、ユーザーが主体的に関わるようなコンテンツも有効でしょう。また、CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)などに取り組む姿勢や実際の活動を伝えるコンテンツも、信頼感の醸成に役立ちます。
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ブランディング戦略の目的のひとつが、ファンの獲得です。ファンの増加は、LTV(Life Time Value=1人の顧客が取引を始めてから終わるまでの期間にもたらす利益の総額)の向上につながり、経営を長期的に安定化させるためです。
WEBブランディングでは、インターネットの双方向性を生かすことにより、新聞広告やテレビCMのような情報を一方的に伝える手法よりも、顧客との関係を強化しやすいと考えられます。
例として、ブランドサイトにおけるファンコミュニティの開設や、SNSでフォロワーを集める取り組みが挙げられます。ユーザーを囲い込んで密に交流することにより、関係性を強化でき、ファンの獲得が期待できるのです。
ファンマーケティングに関する詳しい解説は下記でご覧いただけます。
・ ファンマーケティングとは?施策や成功させるポイント、事例を解説WEBブランディングのメリットには、次のようなものがあります。
WEBサイトには、スペースが限られるマス広告よりも、提供できる情報量が多いという優位性があります。テキストとビジュアルからなる通常のWEBページだけでなく、動画やアニメーション、ゲームなど、多彩なコンテンツによる訴求ができる点もメリットと言えるでしょう。
ユーザーは、自分の声に耳を傾け、ときに適切に回答してくれる企業に対し、好意や安心感を抱きます。そのため、前章で紹介したような双方向のコミュニケーションは、顧客との関係強化に有効と考えられます。
WEBサイトであれば、問い合わせや意見、アンケート、ファンコミュニティなどからユーザーの声を集め、必要に応じてフィードバックを行えます。SNSであれば、フォロワーの個別のコメントにリアルタイムで応えることもできます。
また、マス広告では不特定多数に向けて情報を発信するのに対し、WEBブランディングでは、WEBサイトを訪れるユーザー層が見たい、知りたいことに焦点を絞ったWEBサイトや、個別のLPを用意できます。
ユーザーが「自分に合ったWEBサイトだ」「まさに欲しかった情報を得られた」と満足することにより、ブランドへの親近感や信頼感が深まります。
WEBブランディングでは、WEBサイトの閲覧数、ユーザーの行動履歴、SNSにおけるユーザーの反応やフォロワー数の推移といったアクセスデータを解析することで、ユーザーの反応を数値で把握することが可能です。こうしたデータをもとに施策の成果を客観的に評価し、課題の発見、修正といったPDCAサイクルを回すことができます。
WEBブランディングでは、自社のWEBサイトやSNSを中心に施策を行います。これらの手法はマス広告と比べると、コストが低いというメリットがあります。事業規模が小さく、マス広告を打つことが難しい企業にとっても、取り組みやすい手法と言えるでしょう。
ここでは、ブランドサイトを作る際の一般的な手順を紹介します。
ブランド戦略全体におけるWEBブランディングの位置づけと役割、ほかの戦略との連携方法などを整理します。期間を区切って施策のゴールを明確にしておくと、成果検証がしやすくなります。
WEBブランディングのターゲット層と、その層にどんなブランド価値を訴求するかを絞り込みます。そのうえで、WEBサイトをどんなコンセプトで構築し、運営するかを決定します。
コンセプトに沿って、WEBサイトの内容やデザインを決め、そこで展開するコンテンツを企画します。
WEBサイトの構築を進め、個々のコンテンツを準備し、用意ができたらWEBサイトを公開します。
公開後は、定期的にアクセス解析やソーシャルリスニングなどを行い、成果を検証します。課題があれば、サイトやコンテンツを随時見直し、施策の精度を高めます。
最後に、ブランド価値を上手にアピールしているWEBブランディングの事例を紹介します。
総合食品企業の味の素株式会社のWEBサイトでは、トップページに自社の「志」として“味の素グループは、アミノ酸のはたらきで「食と健康の課題解決企業」を目指します”というメッセージを力強く掲げています。メッセージの発信者として、社長の写真が大きく使われている点も印象的です。
多くの事業を展開する企業だけに、このサイトのコンテンツは多岐にわたり、盛りだくさんです。そこで、「商品」「レシピ」「IR情報」などのナビゲーションをトップページの中央にも大きく表示し、訪れた人が欲しい情報に迷わずにたどり着けるよう工夫されています。
また、WEBマガジン「ストーリー」では、活動レポート、研究開発、食と健康、食と美容などをテーマにした記事を多数掲載。同社の取り組みを深く、幅広く伝えるブランドストーリー集となっています。
「セブンティーンアイス」は、江崎グリコ株式会社の自販機専用アイスクリームです。自販機は、主に行楽地や遊園地、プールや温泉地などに置かれており、多くの人が遊びに行った先で食べた思い出を持っている商品です。
そんなセブンティーンアイスのブランドサイトには、商品のうんちくやゲーム、コミュニティなど参加性のある多彩なコンテンツが用意されています。
なかでも特徴的なのは、自販機の設置場所を検索して地図に表示させる機能やチェックイン機能。外出先で食べたアイスのフレーバーを自販機マップに記録して、自分オリジナルのアイスマップを作ることができるのです。楽しい思い出とともにあるこの商品ならではの、コアなファンにとって魅力的な企画です。
WEBブランディングでは、インターネットを通じてさまざまな情報や体験を提供することにより、自社や商品、サービスの独自の魅力を伝え、共感や信頼の輪を広げることが可能です。ターゲット層のニーズに合ったコンテンツを用意して、ユーザーから支持されるWEBブランディングを進めましょう。
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