販売戦略とは?立て方の手順や役立つフレームワークを紹介

マーケティング・販促
自社の商品やサービスを売るときの指針となるのが販売戦略です。販売戦略は、売上目標を達成するための単なるアクションプランではありません。顧客のニーズや商品のポテンシャル、競合の状況を見極めたうえで、論理的に組み立てていくべき戦略です。この記事では、販売戦略とは何かを説明したうえで、販売戦略を策定する手順や役に立つフレームワークを紹介します。
- 目次
- 1. 販売戦略とは何か
- 2. ランチェスター戦略とは?
- 3. 販売戦略の立て方
- 3-1. 1.現在の市場を分析する
- 3-2. 2.競合の状況を分析する
- 3-3. 3.顧客のニーズを分析する
- 3-4. 4.自社を分析する
- 3-5. 5.課題の発見と対策を検討する
- 3-6. 6.販売戦略、アクションプランを策定する
- 4. 販売戦略の策定に使えるフレームワーク
- 4-1. 3C分析
- 4-2. SWOT分析
- 4-3. STP分析
- 4-4. 4P分析
- 4-5. 4C分析
- 4-6. ペルソナ設定
- 4-7. カスタマージャーニーマップ
- 5. 緻密な分析に基づく現実的な販売戦略が、成功への早道になる
販売戦略とは何か
販売戦略とは、自社の商品やサービスをどのような顧客に、どのような価格で、どのチャネルを通じ、どのようなアプローチによって販売するかを考えて、戦略としてまとめるものです。
論理的な販売戦略を持たずに、勘や経験によって商品が売れることもあるでしょう。ただしそれでは、なぜ売れたのか、なぜ売れなかったのかという要因を客観的に把握できず、次につなげることができません。
また、インターネットの普及によって顧客との接点は多様化し、販売チャネルは複雑になっています。そうしたなかでの場当たり的な対応は、混乱や無駄が生じる可能性を高めます。見込み顧客に効率的にアプローチし、成果を上げるためには、状況分析や顧客分析に基づいた一貫性のある戦略が必要なのです。
では、販売戦略を立案するときには、まず何から考えればいいのでしょう? 基本となる考え方としてよく示されるのが「ランチェスター戦略」です。
ランチェスター戦略とは?
ランチェスター戦略とは、販売競争において、「弱者」の立場から「強者」に勝つためにはどう戦えばいいかを考える戦略方法です。もともと軍事理論でしたが、1970年代から販売戦略の基本として広く用いられるようになりました。
ランチェスター戦略では、「戦争における戦闘力は武器と兵力で決まる」と考えます。これを販売に置き換えると「市場での競争力は、商品力と営業力で決まる」ということになります。
また、弱小集団が戦闘力の大きな相手と戦う場合は、「局地戦に持ち込み、戦闘力をそこに集中させる」ことで勝つ可能性が出てくるという指摘もしています。こちらは、ターゲット(市場・顧客層)を絞り、その狭い範囲において自社商品を競合と明確に差別化することに注力すれば、その市場のリーダーになることができると、読み替えられます。
つまりランチェスター戦略は、商品力と営業力を高めること、そして、的確なターゲット設定とターゲット(顧客)のニーズに応える商品のポジショニング(明確な差別化)を重視する戦略と言えます。
販売戦略の立て方
このランチェスター戦略を念頭に置いて、一般的な販売戦略を立案する際のフローを考えていきましょう。
1.現在の市場を分析する
ターゲットとなる市場の景況、ビジネス環境、社会的なムーブメントなど外部環境について、客観的なデータに基づいて分析します。
2.競合の状況を分析する
競合各社のランキングやシェア、商品力、営業の強み、弱みなどを分析します。
3.顧客のニーズを分析する
自社の商品に対する顧客のニーズ、ウオンツ、課題などを調査、分析します。当該の商品ジャンルについて関心を持っていて、いずれは自社商品を購入する可能性がある潜在顧客層の有無も確認します。
4.自社を分析する
自社のブランド力や商品力、営業力の現状を第三者的な視点で分析します。自社や商品の強みや弱みを確認しておきます。
5.課題の発見と対策を検討する
1~4の分析から課題を洗い出し、その対策を検討します。
6.販売戦略、アクションプランを策定する
5の検討を受けて、販売戦略を策定し、具体的なアクションプランに落とし込みます。
この一連のプロセスにおいて、課題の発見や販売戦略の検討に使われるのが、次に紹介するようなフレームワークです。
販売戦略の策定に使えるフレームワーク
フレームワークとは、ビジネスの環境や戦略を考えるときの「公式」のようなものです。あらかじめ決められた項目を埋めることによって、取るべき戦略を具体化することができます。フレームワークは、販売戦略のうちの何を検討するのかという目的によって使い分けます。
3C分析
自社と自社を取り巻くマーケティング環境を把握するために使うフレームワークです。顧客、競合、自社について、環境や状況を客観的な視点で書き出します。
Customer(顧客)
市場の規模、成長性、顧客のニーズ、購買意欲や購買能力など。
Competitor(競合)
競合企業の状況(売上、利益率、シェア、顧客数、顧客単価など)と、それを支える体制(新製品開発、販売ルート、営業体制、顧客サポートなど)。
Company(自社)
自社の経営資源や売上、収益性、シェア、ブランド力、販路、技術力、組織力など。
SWOT分析
<商品の品質、価格、ブランド力や認知度といった内部環境と、市場の規模や成長率、競合の状況、景気や社会のトレンドといった外部環境を、プラス要因とマイナス要因に分けて整理します。 strong="">「ここを強化すべき」「すぐに対策が必要」といった戦略の方向性を見出すことができます。
Strength(強み)
自社や商品の強みは何か?
Weakness(弱み)
自社や商品の弱みは何か?
Opportunity(機会)
社会情勢や市場の動向などの外部環境において、自社や商品の成長、目標達成に寄与するものは何か?
Threat(脅威)
社会情勢や市場の動向などの外部環境において、自社や商品の成長、目標達成を妨げるものは何か?
STP分析
STP分析は、自社の商品を販売するターゲットを絞り込み、優位性のある差別化ポイントを明確にするために順を追って行います。
Segmentation(セグメンテーション)
まず客観的なデータをもとに、性別、年齢などの属性や、行動の特性、興味・関心といった条件で市場(顧客層)を分類する。
Targeting(ターゲティング)
次に、細分化した市場のなかから、自社の商品にとって有望な市場(顧客)を特定する。
Positioning(ポジショニング)
ターゲティングをした市場において、自社の商品が競合に比べて最も魅力的に見えるポジション(差別化のポイント)を明確にする。
4P分析
ターゲットやポジショニング、内外の環境分析の結果をもとに、具体的な商品や価格設定、売り方などを決めていくフレームワークです。
Product(製品)
販売する製品の品質、デザイン、パッケージなどを考える。その製品は、顧客のニーズを満たすものになっているか? 競合と差別化して優位に立てるか?
Price(価格)
適正な価格を考える。顧客が求めやすい価格か? 商品の価値に見合っているか? 適正な利益が出るか?
Place(流通)
製品をターゲット層に確実に届ける方法を考える。どのような流通経路、どんなチャネルで販売すればよいか?
Promotion(プロモーション)
広報や広告、販売促進の方法、利用するメディアを考える。どうすれば製品を知ってもらい、購入につなげることができるか?
4C分析
企業側、売る側の視点で戦略を考える4P分析を発展させ、顧客側、買う側の視点でマーケットを捉えようとするフレームワークが4C分析です。市場には商品があふれ、消費者の購買行動が多様化するなかで、自社の商品が選ばれるには、顧客が本当に望むものは何かを考え、そこから戦略を立てる必要があります。
Customer Value(顧客価値)
顧客がその商品に求める価値とは? 顧客が商品からどんなメリットや効果、満足感を得るかを考える。
Cost(顧客のコスト)
商品の価値に対し、顧客が納得して支払うコストはいくらか? 顧客が商品を手にするまでに必要とする時間や手間もコストとして考える。
Convenience(顧客にとっての利便性)
顧客が入手しやすい商品の提供方法とは? 店舗であればアクセスや営業時間、ECであれば、サイトの見やすさや決済方法なども含めて、顧客にとって利便性の高い入手経路を検討する。
Communication(顧客とのコミュニケーション)
顧客にとって望ましいコミュニケーションとは? 企業のメッセージを届け、顧客の声を聞く双方向のコミュニケーション方法を、対面や電話、Webサイト、SNSといったツールの活用も含めて考える。
ペルソナ設定
ペルソナとは、顧客のなかで最もその商品を必要とする、理想的な人物像のことです。この人物像を詳細に設定し、関係者で共有することによって、チャネル戦略や広告戦略がクリアになり、ぶれをなくすことができます。ペルソナ設定の主な項目は以下のようなものです。
・年齢、性別、居住地などの基本情報
・職業、働き方、最終学歴
・起床時間や就寝時間、休日の過ごし方などの生活パターン
・性格や価値観
・家族構成
・収入、貯蓄の状況
・趣味、関心事(旅行、ショッピングの傾向など)
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーとは、商品の認知、検討、購入、利用後の問い合わせや情報拡散といった顧客がたどる一連の経緯を、旅行になぞらえる考え方です。カスタマージャーニーマップでは、この「顧客の旅」を時系列で整理し、自社とのタッチポイントにおける顧客の行動や思考、感情の分析を行います。そして店頭、カスタマーセンター、Webサイト、広告やプロモーションといった各タッチポイントが最も効果的に機能する施策を導き出します。
緻密な分析に基づく現実的な販売戦略が、成功への早道になる
新しい商品を扱うことが決まったら、一刻も早く販売を始めたくなりますが、ここは急がば回れ。消費者のニーズを的確につかみ、競合や社会の状況を把握し、自社や商品のポテンシャルを冷静に分析して、現実的な販売戦略を立てましょう。綿密な調査・分析に基づく販売戦略の策定が、結果として成功への早道となります。
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