ファンマーケティングとは?手法や成功のポイント、事例を解説

マーケティング・販促
従来のマーケティングが効かなくなったといわれるなか、注目されている戦略のひとつがファンマーケティングです。ファンマーケティングでは、自社の商品・サービス、ブランドに強い愛着を持つ人々を集め、育てることによって、継続的、安定的に利益を上げることを目指します。この記事では、ファンマーケティングの概要や具体的な施策、成功事例をご紹介します。
- 目次
- 1. ファンマーケティングとは
- 1-1. ファンとは
- 2. ファンマーケティングが注目される理由
- 2-1. 市場が縮小し、LTVが重視されるようになった
- 2-2. 既存顧客を対象にした方が、コスト効率が良い
- 2-3. 消費者発の情報が影響力を持つようになった
- 3. ファンマーケティングを行うメリット
- 3-1. 価格競争を回避できる
- 3-2. LTVが高まり、継続的に利益が確保できる
- 3-3. 消費者発の情報を活用できる
- 3-4. 顧客の声をサービス改善や商品開発に活かせる
- 4. ファンマーケティングの手法
- 4-1. SNSの活用
- 4-2. コミュニティの構築
- 4-3. ファン限定イベントの開催
- 4-4. ファン限定サービスの提供
- 4-5. サンプリング体験の実施
- 5. ファンマーケティングを成功させる3つのポイント
- 5-1. 独自の価値を明確に打ち出す
- 5-2. 信頼関係を育てる
- 5-3. 特別感を演出する
- 6. ファンマーケティングの成功事例
- 6-1. 企業とファン、ファン同士がつながるイベントで熱狂的なファンを育成[ヤッホーブルーイング]
- 6-2. 愛車の写真投稿を通じてInstagramに密なコミュニティを形成[本田技研工業]
- 6-3. 理想のからだをみんなで目指すコミュニティが購入継続のモチベーションに[ベースフード]
- 7. ファンマーケティングは企業が成長し続けるための基盤になる
ファンマーケティングとは
ファンマーケティングとは、企業自体やブランド、商品、サービスに対して強い愛着を持つ「ファン」を育てることによって、継続的、安定的な利益の確保を目指すマーケティング戦略です。
ファンとは
一般的な意味でのファンとは、特定の人物や事象に対する支持者や愛好者のことです。マーケティングのジャンルでは主に、特定の企業やブランド、商品、サービスなどへの愛着が強い人を指します。
ファンマーケティングが注目される理由
それでは、なぜ今、ファンマーケティングが注目されているのでしょうか?
市場が縮小し、LTVが重視されるようになった
人口減少により市場は縮小を続けており、新たな顧客を獲得し続けることはますます難しくなっています。
そこで、既存顧客に購入や利用をリピートしてもらうことで、1人の顧客から多くの収益を上げてLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)を向上させるマーケティング施策に重点が置かれるようになったのです。
なかでも、商品やブランドに対する強い愛着心を育てるファンマーケティングは、将来にわたって安定的に利益の確保が見込める施策として注目されています。
既存顧客を対象にした方が、コスト効率が良い
新規顧客の獲得コストは、既存顧客にリピートさせるコストの5倍かかるといわれています(1:5の法則)。
また、顧客全体の2割しかいない優良顧客が、売上の8割を上げるという経験則(パレートの法則)もよく知られています。
こうしたことから、顧客全体に同じアプローチをするのではなく、コアな既存顧客との関係性を強化する方が、コストを抑えて、効率良く利益を生むと考えられます。
消費者発の情報が影響力を持つようになった
誰もがSNSを使って自由に情報を発信、拡散できる時代を迎え、消費者発の情報が市場に大きな影響を与えるようになりました。
ファンが商品、サービスを熱く支持する口コミが、企業による広告やPRよりも認知拡大や売上アップにつながるケースも数多く見られます。
ただし、消費者の声は企業側でコントロールすることはできません。消費者の情報発信力をビジネスに活用するには、自社の商品に関してポジティブな声を自発的に挙げてくれるようなファンを増やすことが重要です。
ファンマーケティングのメリット
ここで、ファンマーケティングを行うメリットを整理しておきます。
価格競争を回避できる
ファンは、商品・サービスの購入・利用頻度が高く、競合より多少価格が高くても、自社の商品、サービスを選んでくれる誠実で優良なリピーターです。
ブランドや企業を愛し、応援したいという気持ちで長期にわたって商品・サービスを購入し続けてくれます。
LTVが高まり、継続的に利益が確保できる
ファンマーケティングで顧客と継続的な関係性を構築することで、商品・サービスのリピート購入やアップセル、クロスセルを実現でき、LTVの向上に寄与します。そのため、ファンが増えると、継続的、安定的に売上の見通しが立つようになります。
消費者発の情報を活用できる
消費者発の情報は、広く拡散されることによって認知度向上や新規顧客の獲得につながり、費用対効果の高いマーケティング施策になり得ます。
また、商品の使い方や使用感などに関して自発的に起きるファン同士の情報交換が、良質なカスタマーサポートになるケースもあります。
顧客の声をサービス改善や商品開発に活かせる
多くの企業が商品開発や改良のための情報収集に苦心していますが、リアルなユーザーであるファンからは、詳細なフィードバックを受けることができます。愛があるからこその忌憚(きたん)のない意見は、商品・サービスの改善や、新しい視点での商品開発の起点となるはずです。
ファンマーケティングの施策
次に、主なファンマーケティングの手法を5つご紹介します。
- SNSの活用
- コミュニティの構築
- ファン限定イベントの開催
- ファン限定サービスの提供
- サンプリング体験の実施
SNSの活用
フォロワー(ファン)への情報発信が行えるSNSは、リツイートやシェアを通して拡散も期待できるファンマーケティングの重要な施策です。フォロワーの興味を喚起し、楽しませる情報を定期的に発信し続けることで、愛着を感じてもらえます。双方向のコミュニケーションが、ファンとの結びつきを強める鍵です。
ユーザーの投稿をUGC(User Generated Contents=ユーザー生成コンテンツ)として、関係性の強化や新しいファンの獲得に活用することもできます。
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コミュニティの構築
ファン同士が交流し、自由に情報交換ができるコミュニティをつくることも有効な施策です。コミュニティが活性化し、盛り上がることで、ファンの共感性や満足度を高めることができます。
またコミュニティを起点にすると、次項のような限定イベントが開催しやすくなります。
ファン限定イベントの開催
ファンミーティングやライブ配信、ファン限定の工場見学会、商品開発会議といったイベントでは、ファンと直接コミュニケーションをとることができます。
企業にとってはファンの生の声を聞く良い機会になりますし、参加者側は特別な体験を通してファンとしての意識や意欲が高まります。
ファン限定サービスの提供
一般には出回らない商品の特別販売や限定コンテンツの配信、ランク別のポイント、特典の付与といったファン限定サービスは、ファンでいることの特別感や優越感を感じさせ、関係性の強化に効果的です。
サンプリング体験の実施
実際に製品を体験する機会を提供し、SNS等で口コミを発信してもらいます。口コミの拡散やUGCの創出といった効果があるほか、体験後に感想を聞いて商品開発に反映することもできます。
ファンマーケティングを成功させる3つのポイント
ファンマーケティングを成功に導くために注意したい3つのポイントを紹介します。
独自の価値を明確に打ち出す
1つ目のポイントは、自社ならでは、その商品ならではの「独自の価値」を明確に打ち出し、その価値を高め続けることです。
独自性がある優れた商品、価値を伝えるストーリーを持つ商品には、その価値を理解し、ストーリーに共感するファンが付く可能性があります。
逆に、どこにでもある差別化ができていない商品は、強い愛着を持たれにくいと言えます。
信頼関係を育てる
ファンとの接点を増やし、丁寧にコミュニケーションを取ることで、ファンの信頼感を強めることができます。
ただし、雑な対応やあからさまな売り込み、商品の持ち味を打ち消すモデルチェンジなどによって、ファンとの信頼関係はすぐに壊れてしまう危険性があります。
ファンの気持ちを十分に理解し、信頼を裏切らないように、誠実な対応を心掛けましょう。
特別感を演出する
前述の限定イベントや限定サービスのように、ファンが一般の消費者と区別されている、大事にされているという実感を持てる機会を設けることも大切です。
そうした機会を通して、ファンでいることの満足感を高め、応援したいというモチベーションを上げることができます。
ファンマーケティングの成功事例
最後にファンマーケティングの成功事例を3件紹介します。
企業とファン、ファン同士がつながるイベントで熱狂的なファンを育成[ヤッホーブルーイング]
クラフトビールメーカーの株式会社ヤッホーブルーイングは、定期的にファンミーティングやイベントを開催。企業とファン、ファン同士がつながる場をつくることで仲間意識を高め、熱量の高いファンのコミュニティ形成に成功しています。2018年にはお台場で5000人規模の「超宴」を開催して話題になりました。
熱狂的なファンの支持で、大手メーカーがシェアのほとんどを占める国内ビール市場の中でも、存在感を放っています。
愛車の写真投稿を通じてInstagramに密なコミュニティを形成[本田技研工業]
本田技研工業株式会社のInstagram公式アカウントでは、#MeandHonda を付けて投稿された、ホンダ車ユーザーの外出時の写真やホンダ製品の写真を紹介しています。
美しい風景を背景にした車の写真が質の高いUGCとなり、フォロワーは16万人超(2022年8月現在)。
今では、公式アカウントへの採用が投稿の大きなモチベーションになっており、投稿にはほかのフォロワーから多くのコメントが寄せられます。Instagram上にファンが集まり、交流する場が生まれているのです。
理想のからだをみんなで目指すコミュニティが購入継続のモチベーションに[ベースフード]
完全栄養食の開発・販売を行うベースフード株式会社の定期購入者限定コミュニティサイト「BASE FOOD Labo」では、毎月「BASE FOOD CAMP」というイベントを実施しています。
イベントでは、理想のからだや生活を一緒に目指そうと、投稿やほかの人の投稿へのコメントを呼びかけています。投稿やコメントには、商品購入に使えるポイントが付与されます。
同サイトは、「食べたよ報告」「おすすめレシピ」のほか、健康やダイエットについての「栄養相談」「目標宣言」「結果報告」といった投稿でとてもにぎわっています。
そして、「みんなで取り組んでいる」という感覚が、定期購入を始める際の安心感や、継続購入の動機付けにつながっているようです。
ファンマーケティングは企業が成長し続けるための基盤になる
ファンマーケティングを、既存顧客に特化したやや消極的な戦略と感じる人がいるかもしれません。しかし、ファンを増やし、育てることは、経営の中長期的な安定化につながります。ファンの声を聞くことで、商品のブラッシュアップや業務改善のヒントも得られます。ファンマーケティングは、企業が成長し続けるための基盤になり得る戦略と言えるでしょう。
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